注意欠如・多動症
注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:ADHD)(以後はADHDと書きます)
ADHDは、「多動性」「衝動性」「注意欠如(不注意)」の3つの症状があらわれます。ただし、3つの症状がすべてあらわれる方もいれば、「多動性」が目立つ人もいれば「衝動性」が目立つ人「注意欠如」が目立つ人などがあります。
多動・衝動性が優位なタイプとは
女性 < 男性のように男性に多く見られます。多動性が優位な人は、落ち着きがなく、じっとしていることができないという特徴があります。衝動性が優位な人は、自分の感情を調整したり抑制したりすることが苦手で、考える前に行動してしまうなどの特徴があります。このため、物事の優先順位を決められないという人もいます。
注意欠如が優位タイプと
男性 < 女性のように女性に多く見られます。集中や注意することが苦手で長時間続けられないのが特徴です。なので、子供の場合は、学習が遅れがちになったり、忘れ物や物を無くしたりすることも多かったりします。それと整理整頓が苦手という特性を持っております。
混合型
多動性・衝動性・注意欠如の3つの特性を併せ持っているタイプです。ADHDの特性を持つ方の8割は混合型といわれいてます。ただし、どの行動特性が強く出るかは、人によって異なります。例えば、人の話を聞かず一方的に脈絡もなく話、整理整頓が苦手という人もいれば、いつもぼんやりしていて、人の話を聞いていないように見えるのに、自分の興味がある分野に関しては急に饒舌的になり人が話していても遮って話したりする人もいます。
ADHDの診断基準
医師は心理師はどこを診て判断しているのか。
A. (1)および/または(2)によって特徴づけられる。不注意および/または多動症・衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げとなっているもの:
(1)不注意:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接悪影響を及ぼすほどである。
注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。
(a)学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない。または不注意な間違いをする。
(例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう。作業が不正確である)
(b)課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である。
(例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい)
(c)直接話しかけられた時に、しばしば聞いていないように見える。
(例:明らかに注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)
(d)しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での業務をやり遂げることができない。
(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる。また容易に脱線する)
(e)課題や活動を順序だてることがしばしば困難である。
(例:一連の課題を遂行することが難しい。資料や持ち物を整理しておくことが難しい。作業が乱雑でまとまりがない。時間の管理が苦手。締め切りを守れない。)
(f)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う。
(課題の例:学業や宿題。青年期後期および成人では報告書の作成、書類にもれなく記入すること。長い文章を見直すこと。)
(g)課題や活動に必要なものをしばしばなくしてしまう。
(なくす物の例:学校の教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)
(h)しばしば外的刺激によってすぐ気が散ってしまう。
(青年後期および成人では無関係な考えも含まれる)
(i)しばしば日々の活動で忘れっぽい。
(例:用事を足すこと。お使いをすること。青年後期および成人では、電話を折り返しかけること。お金の支払い会合の約束を守ること。)
(2)多動症および衝動性:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で社会的および学業的/職業的活動に直接悪影響を及ぼすほどである。
注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。
(a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする。または椅子の上でもじもじする。
(b)席についていることが求められる場面で、しばしば席を離れる。
(例:教室、職場、その他の作業場所で。またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所から離れる)
(c)不適切な状況でしばしば走り回ったり、高い所へ登ったりする。
(注:青年または成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)
(d)静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない。
(e)しばしばじっとしていないまたは「まるでエンジンで動かされているように」行動する。
(例:レストランや会議に長時間とどまることができないかまたは不快に感じる。他の人たちには、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じるかもしれない)
(f)しばしばしゃべりすぎる。
(g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう。
(例:他の人たちの言葉の続きを言ってしまう。会話で自分の番を待つことができない)
(h)しばしば自分の順番を待つことが困難である。
(例:列に並んでいるとき)
(i)しばしば他人を妨害し、邪魔をする。
(例:会話、ゲームまたは活動に干渉する。相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない。青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りしたりすることがあるかもしれない)
B. 不注意または多動性・衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。
C. 不注意または多動性・衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況において存在する。
(例:家庭や学校、職場。友人や親戚といるとき。その活動中)
D. これらの症状が、社会的、学業的、または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。
E. その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティー障害、物質中毒または離脱)ではうまく説明されない。
参考文献:
高橋三郎・大野裕監訳『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』
医学書院 2014/6/30
山本英典・大隅典子監修
Newton別冊 精神の病気 発達障害編
最新脳科学と行動心理学で、発達障害のしくみがよくわかる
株式会社ニュートンプレス 2020/12/5