目次
1、境界知能とは
2、最近、相談が増えている境界知能の子供と大人たち
●境界知能という言葉は、いつごろから使われいつ頃から使われなくなったのか
3、横浜認知行動療法研究会でも議論しています。
4、認知機能強化トレーニング
各ページ
★境界知能の説明と子供から大人の認知機能強化トレーニング
★境界知能の大人の認知機能強化トレーニング(コグトレなど)の説明と申込方法
★境界知能の子供の認知機能強化トレーニング(コグトレなど)の説明
★子供の認知機能強化トレーニング・募集内容と申込方法

境界知能とは
境界知能とは、一般的に知能指数(=IQ)が70~85未満のことをいいます。
IQ85〜115が平均とされており、IQ70未満は低い(知的発達症<知的能力障害>)とされている。
「IQ50〜70未満の知的発達症」と「平均のIQ85〜115」との間にあるIQ値を境界知能と言っています。
ただし、世界的な診断基準では現在は『社会生活を行う上で困難(とてもしんどい)な状況を生じさせる個人的問題の一つ』となっています。また、IQで表すことを放棄しています。
それと、境界知能という診断名はございません。
境界知能と呼ぶときは、『日常生活や社会生活(学校や会社など)などの環境で、様々な影響により困りごとが生じている状態(社会生活を行う上での問題)』に対して使われています。このような言い方をしていますが、実際は『何かをしていても、いつもできない自分を知ることの辛さ』など、とても困られている方が多い。
特にIQ70前半から中ごろの子供(小学生の中学年以上)から大人の方々がよく言う訴えでは(IQ70後半からIQ80代の方にもおられます)、『できないもどかしさと、できない自分を理解できてしまう辛さ、そして、そのことが理解できてもやっぱりできない自分がいる辛さ』と訴えられます。
その辛さは計り知れない辛さだと私も思いながら、少しでも理解力や脳力が向上していただけるように、トレーニング指導やコーチングでお手伝いをさせていただいております。
一般論の話として、IQはプラス・マイナス15程度であれば変化すると考えられています。

境界知能の人数
人口に対して約14%、約1,700万人もの方おられると言われています。
(7人に1人・仮に小学校や中学校でひとクラスが35人だとしたら約5人いることになります)
境界知能の方は、個人個人多少の違いはございますが、子供のころから『勉強が苦手』『コミュニケーションが苦手』『運動が苦手(個々で違う)』といった学習面や社会面、身体面で問題を抱えているために、生きづらさを感じながら過ごされている方々が多くおられます。
また、IQだけでなく実行機能の問題も指摘されている。
(社会生活で困られていたり、苦労されたりしている大人の方も実行機能の問題をお持ちの方が多くおられます)
実行機能(特に前頭葉の働き)は、ADHDの方も問題となっている。
※実行機能には、ワーキングメモリー(作業記憶)や自己抑制、注意・集中力、整理整頓、計画性、セルフモニタリング(自己モニタリング、自己監視)などのが含まれております。
※ワーキングメモリー(作業記憶)とは、思考や判断などの際に必要な情報を一時保存しておく記憶機能。
注意・ワーキングメモリーの働きが弱い場合
以下のような困難が生じることがあります。
◎注意散漫になりやすい
◎指示を聞き逃しやすい、または複数の指示を一度に覚えられない
◎会話中に話が逸れたり、何を話していたかを忘れたりする
◎文章を読むのに時間がかかる、読んでも内容が頭に入りにくい
◎計画を立てたり、段取り良く物事を進めたりするのが苦手
◎計算ミスが多い(特に暗算)
◎忘れ物や失くし物が多い
境界知能の子供は、本人は努力しているが勉強がわからないなどとても困っている。ただ、比較的困っていることが親を含めた周りの大人たちに気づかれることが少なく、相談や支援につながらないことも多いといわれています。
そのため、子供は「何かうまくいかない」ということが日々積み重なり、結果的に自己肯定感が低くなり、ある時から問題行動や精神疾患になってしまう可能性も指摘されています。これは二次障害と呼ばれています。
最近、相談が増えている境界知能の子供と大人たち
境界知能や軽度の知的発達症(知的能力障害)の方の性非行や性暴力、性加害の相談が年々増えています。
もちろん境界知能でない子供や大人の方で、性非行や性暴力、性犯罪を犯してしまった方も相談に来られています。
(相談人数としては、元の人数が違うので境界知能や軽度の知的発達症でない人の相談の方が多い)
子供から大人の性犯罪加害者や性暴力の再犯防止のための認知行動療法とカウンセリングページ
境界知能という言葉は、いつごろから使われいつ頃から使われなくなったのか
ちょっと難しい話になりますが、
アメリカ精神医学会が作成している『精神疾患の診断基準・診断分類』というのがあります。
正式には「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」といい、頭文字をとってDSM「ディーエスエム」と呼びます。
現在使用されているDSM-5-TRは、第5版のText Revisionで2022年に改訂・公開されました。
当初のDSM-Ⅰの診断基準では、IQ70~85を軽度の知的障害、DSM-ⅡではIQ68~83を軽度精神遅滞(軽度知的障害)となっていたが、DSM-Ⅲ(1980年)からは境界知能(IQ70~85未満)は知的障害ではなくなっています。
また、世界保健機関(WHO)が発行するICD(国際疾病分類)においても、第8版のICD-8(1965年~1974年)では、IQ71~84を境界線精神遅滞(境界知的障害)としていました。その後の第9版のICD-9以降はIQ71~84を知的障害に含まなくなっている。現在はICD-11(2018)である。
※ここでは知的能力障害(知的発達障害)のことを知的障害と書かせていただいております。
境界知能が注目されたのは
専門家の中では診断基準のところで出ているように以前から問題になっていましたが、境界知能という言葉が、日本で一般の方にこれほど注目され始めたのは、2020年の著書「ケーキの切れない少年たち」著者・宮口幸治氏(児童精神科医師)の発売からではないかと考えます。
そこには、宮口氏が医療少年院で勤めていた時、非行少年たちが『計算ができない』『漢字が読めない』『簡単な図形さえ模写できない』『計画が立てられない』『見通しを持てない』などの認知機能が弱いこと知ったことなどについて書かれています。
以下の特徴があったと書かれています。
認知機能が弱い:・見る、聞く、想像する力が弱い/・反省ができない
感情統制が弱い:・感情をコントロールできない
融通が効かない:・予想外への対処が苦手/・被害者意識を持つ傾向がある
自己評価が不適切:・自分の課題がわからない/・自信がありすぎたりなさすぎたりする
対人スキルが乏しい:・人とのコミュニケーションが苦手
身体的な不器用さ:・手先が不器用
なお、当たり前のことですが、境界知能を持つ人がすべて非行になるわけではございません。
ただ、学校や社会生活の中で生きづらさを抱えて生活をしていることは間違いないと思います。
もう一つは、2020年7月30日のNHK NEWS WEBで取り上げられたことも注目された一つであろうと考えます。
タイトル:なぜ何もかもうまくいかない? わたしは「境界知能」でした
横浜認知行動療法研究会でも議論しています。
『現地点で有効な『認知機能強化トレーニング』の実施方法や、より有効なトレーニングの開発・研究を行う必要性などを議論しております』
私(千田)が主管している『横浜認知行動療法研究会』(今年で21年目・メンバー87名)のメンバー。
メンバーは、教諭やスクールカウンセラー、大学教授、医師、看護師、作業療法士、公認心理師など教育と医療、心理の専門職で、境界知能のことが話題になることが度々あります。

認知機能強化トレーニング以外に重要なことは、(子供に対して、極力否定形の言葉を使わない)
●どうしても叱られることが多くなるために、自己肯定感や自尊心が育たない。(健康に育つうえで一番重要であろうと考えております)
●大切な人(親や教諭等の大人)に対して、本当のことを言えなくなっている。
例えば、授業がわからないと言うと叱られたりするために、本当はわかっていなかったりできないでいることを、親や教師に伝えないために理解できないまま進んでしまっていることが多くあります。
このことは、トレーニングに来られているほとんどの小学生や中学生が言っていることですが「小学校に入学以降(小学1年生から)、授業での先生の説明が半分以上理解できないでいたが先生にもお母さん・お父さんにも言えないでいた」
(これは境界知能の子供にとって、先生の説明スピードが速いことと一回の説明量が多いために起こってしまうことです)
※横浜認知行動療法研究会
メンバーは医師や公認心理師、小・中・高の教諭、大学教授・講師、看護師、作業療法士、その他、医療、心理、教育、福祉の専門職とその職業を目指している大学院生で構成されております。
認知機能強化トレーニング
認知機能とは、記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断といったいくつかの要素が含まれている知的機能を指します。
また、認知機能強化とは、記憶力・注意力・判断力・学習能力・問題解決能力などの「認知機能」を高めたり維持したりする取り組みのことをいいます。

覚える-記憶と言語理解
記憶には視覚や聴覚といった感覚器官から入った情報を記憶する短期記憶と長期記憶がありますが、ここでは視覚・聴覚性の短期記憶【視覚性の単純短期記憶、視空間ワーキングメモリ、聴覚(言語性)ワーキングメモリ】と文章理解(文章理解力)を目的としたトレーニングを行います。
数える-注意
記号等の数を素早く数えたり、計算をすることで、注意力、集中力、処理速度の向上を目的としたトレーニングを行います。
写す-知覚
視覚認知の基礎力のトレーニングで、提示された図形の模写を中心に形の把握を主にしたトレーニングを行います。
見つける-知覚
形の恒常性トレーニングと複数の視覚情報の中から共通点・相違点を見つけるトレーニングを行います。
想像する-推論・判断
提示された視覚情報から結果を想像します。関係性の理解、論理的思考、時間概念を目的にトレーニングを行います。
また、どうすればうまくいく・できるかといった方略も必要になるので、実行機能の強化のトレーニングの一つとしても利用できます。
より詳しくお知りになりたい方は、以下の各ページをご参照ください。
★境界知能の説明と子供から大人の認知機能強化トレーニング
★境界知能の大人の認知機能強化トレーニング(コグトレなど)の説明と申込方法
★境界知能の子供の認知機能強化トレーニング(コグトレなど)の説明
★子供の認知機能強化トレーニング・募集内容と申込方法
こちらのページもご参考に
『認知機能強化トレーニングplus家庭教師』
境界知能の子供に特化した
『認知機能強化トレーニング(コグトレなど)plusコーチ(家庭教師)』
参考文献:
Prevalence and cumulative incidense of autism spectrum disorders and the patterns of co~occurring neurodevelopmental disorders in a total population sample of 5-year~old children.
著者:斉藤まなぶ、中村和彦、他
雑誌名:Molecular Autism
