うつ病・抑うつ状態に対する鍼(はり)治療の例
今回の掲載は本人に了解を得ている事例であることと、個人を特定できないように施しをしております。
うつ病や抑うつ状態でお困りの方はご参考にしてください。

ここでの説明目的
うつ症状に対して、どのような鍼治療を行うのかを事例を通して説明いたします。
また、最後に鍼治療単独と鍼治療と認知行動療法の併用する方法の選択をどのようにしているかの説明を加えています。
30代・男性
2年前に会社で部署の移動がある。
その移動先の上司がとてもいい人で仕事が進めやすかった。
ただ、1年前に上司が変わったのだが、その上司はとても厳しく細かい人で、ちょっとでも間違っていると注意をしてくるタイプだった。
6カ月ぐらいたったころより、会社に行くのが億劫になりはじめ、眠るのに30分ぐらいかかかるようになりはじめていた。
3か月前からは朝も時間通りに起きれず憂うつな気分が強くなり、会社を休むことがたびたびあるために、心配になり近くのメンタルクリニック(精神科)を受診。
うつ病と診断され3か月の休職となる。
精神科では、薬物療法を受ける。
約3か月の休職と薬物療法でよくはなっているが、まだ何となく憂鬱な気分と後頭部から背中にかけて重だるさがあるために当ルームを受診。
性格:真面目、神経質、内向的、ネガティブ考える傾向がある
既往歴(過去に大きな病気をした経験):重篤な病気や入院・手術はしたこともない。
たばこ:吸わない
お酒:日に350mlのビール
趣味:バイクをいじること
家族:妻・30代
当ルームでの検査結果
QIDS -J(簡易抑うつ症状尺度):12(中等度)
CMI健康調査票:領域Ⅲ(どちらかといえば神経症の可能性が強い)
※CMI健康調査票は身体的自覚症(12系統別)と精神的自覚症(6状態別)を把握と、そこから神経症(ストレスによって精神が疲弊した状態)かどうかの確認をする検査です。
施術の方針と施術の内容
1、うつ病の場合、脳の血流量が低下しているために脳血流の改善とセロトニンの活性化を目的に行う。
施術の内容
●脳血流改善を目的に、四肢末端への鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)(どこのツボではなく肘から先と膝から先に鍼治療を行うことで、脳血流が改善することがわかっている)
●脳血流改善を目的に、頭のてっぺん付近(ツボ名は百会)と眉間(ツボ名は印堂)に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)
●耳に置鍼(20分程度)(脳血流が改善することがわかっている)
※置鍼とは、鍼を刺入した状態で置いておくこと。
2、特に左前頭葉の血流量の改善。(うつ病は左前頭葉の血流量が低下していることが研究などで報告されている)
施術の内容
●脳血流改善を目的に、特に左前頭葉の2か所に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)
3、後頭下筋群(後頭部にある細かな筋肉)から背中の重だるさはうつ病による反応であろうと考える。
ただ、今回は筋肉の緊張があったので緩めることを目的に行う。
施術の内容
●後頭下筋群から背中の筋緊張があるところに置鍼(20分程度)
4、ホームワーク(自宅で行ってもらうこと):ウォーキングなどの運動療法や行動活性化という方法を用いる。
精神科医の協力のもと『鍼刺激によるうつ病患者の脳(前頭前野)の血流量の変化』の研究を約1年6カ月にわたって行いました。
(写真はその時の模様、掲載許可済み)

初診時
現在の困りごとを伺いうつ病のテストとしてQIDS -Jを行う。
次に、症状や状態の説明を認知モデル/認知行動モデルで説明を行った後に上記の内容の鍼施術を行った。
ホームワークとしては、ウォーキング(早歩き)を日に20分とCMI健康調査票の記入してきてもらうこととした。
※認知モデル/認知行動モデルとは、認知行動療法で状態を説明するときに用いる方法。
状況⇒認知(物事の捉え方)⇒気分-行動-身体化

2セッション以降(1週間に1回から隔週)
前回の施術後の確認。鍼当たり(施術後の重だるさなど)があったかどうかなど、ネガティブな要因と気分や後頭部から背中にかけて重だるさの変化やポジティブな要因の確認後施術を行う。
以後、2セッション~16セッション(14セッション以降は頻度は隔週とした)の終了まで鍼施術内容に変化はない。
ホームワーク
ホームワークは、4セッションまではウォーキング20分として、5セッションからは本人との相談のうえで徐々に歩くスピードを上げてもらう。また、時間も30分とした。
16セッションでは、当初の症状もなく職場でも問題なく仕事ができているということなので終了となる。
余談:うつ病に対しての施術終了後は、月に1回ペースでコンディショニングのために継続して来られている。
このように終了後も継続される方は結構おられます。
施術回数:16回
頻度:週1回~治療終盤は隔週1回
期間:約4カ月
うつ病のテスト
今回使用しているテストでは、軽度-中等度-重度-最重度などのように結果が4段階で分かるようなっております。(3段階のもある)
ここでの重度以上が大うつ病に該当します。
重度・最重度の場合は、休息と薬物治療が第一選択となります。
状態によって施術方法が変わる
1、鍼治療単独でも有効な場合は、うつ病まで発展していない抑うつ状態の方や軽症には有効であろうと考えます。特に身体症状が中心の方には有効です。
※抑うつ状態・・憂うつな気分が続いたり、やる気が起きなくなっていたり、気分がなくとなく落ち込んでいる状態。
2、うつ病になっている方で、身体症状もあるがネガティブな考えが強くなっている場合は、鍼治療と認知行動療法の併用療法を用います。
※鍼治療が有効でない時は、認知行動療法単独の場合もあります。
3、うつ病の状態が長い場合は、スキーマの問題(ネガティブな長期記憶)が問題となるので、認知行動療法が選択肢の一つとなります。また、再発を繰り返している方も同様です。
この段階では、鍼治療はあまり意味をなさないと考えていいと思います。
※千田は、このレベルで鍼治療を求めてこられた場合は、鍼治療では効果は認められないと考えるので認知行動療法を勧めます。ただし、どうしてもという場合は、鍼治療と認知行動療法の併用を行います。
うつ病になる手前
ストレスを感じているがうまく解消できないなと感じている時に鍼治療を受けられることをお勧めいたします。
この時は、自律神経のバランスが崩れ始めている時にあたります。
-憂鬱な状態が少し続いたら早い段階で鍼治療を受けましょう-
当ルームの鍼灸治療ページ
鍼灸治療:ストレス疾患と自律神経関連疾患が専門(関連疾患・不妊症と筋肉の痛み)
★心理師と現在医学的鍼灸が専門の鍼灸師の視点で、はり治療と心療鍼灸(はり治療と認知行動療法の併用)を行っております。


