研究会後:境界知能の子供から大人の対応方法などについて話し合う
第169回横浜認知行動療法研究会(2025年11月30日)では、私(千田)が境界知能の方の事例を発表させていただいた。
参加者は、スクールカウンセラー(公認心理師)・2名、元小学校校長で中学校で公認心理師としてサポート、大学教授、就労移行支援事業所の公認心理師、そして千田(開業心理師)の6名であった。
目次
★何年生から理解できなくなるのか。
★学校のサポートはどうなっているのか。
★お父さん、お母さんはどのように理解しているのか。
★千田のやっている認知機能強化トレーニングは
・参加者の問い・認知機能強化トレーニングは、どういうのがあるの。
・参加者の問い・効果は
・勉強以外の問題にも効果があると考える。
事例については詳しくは書きませんが、『小学校の低学年から勉強がわからなくなったっていた子供が、大人になって職場でも計算・漢字や仕事のスケジュール管理、対人関係などで困っているIQ76の境界知能の方への対応』について発表をした。

事例の発表終了後には、境界知能の子供たちはどの学年から勉強がわからなくなって困りはじめるのか。小学校と中学校の対応はどのようになっているのか。親は子供の状態をきちんと理解できているのか。などについて話し合った。
何年生から勉強が理解できなくなるのか。
これについては、元校長の心理師が小学2年生の後半で掛け算が出てくるので、このあたりからついていけなくなっていく。また、小学3年生では分数が出てくるのでよりついていけなくなり、国語では漢字の読み書きでつまづきはじめ、理科、社会でもだんだんとついていけなくなっていくという流れがほとんどだと思うと話された。
それと教科の難しさに加えて、境界知能の子供にとっては、授業の進むペースが速すぎて理解できない状態で座っていることが多くなる。
このあたりで気づいて対応できればいいのだが、親も教師もそれほど危機感を持っていないのではないか。
例えば、勉強をしないから、さぼっているからできないのであって、子供がやる気になってやればできるようになると考えていることが多い。
努力不足であると親や教師に思われていることが結構ある。
ただ、本当のことろは子供としては努力してこの状態なのに、『もっと努力しなさい』と言われていることでとても辛い状態になっている。

学校のサポートはどうなっているのか。
神経発達症(発達障害)や知的能力障害(知的発達症)の場合、通常学級でも支援を受けることもあるが、特別支援学校や特別支援学級などでに通って、少人数のクラスで細かな指導や支援を受けることができます。
では、境界知能の子供の場合は、通常学級で勉強が出来なくても授業のスピードについて行けなくても、通常は支援を受けることはできない。
ただ、小学校の場合はサポートが付いたりする場合もありますが、常時いるかというとそういうわけでもない。
小学校ごとでバラバラだと思うということだそうです。
中学校の場合は、サポートすらない状況なので子供はわからないまま過ごすというのが現状みたいです。
お父さん、お母さんはどのように理解しているのか。
これについて、小学校でスクールカウンセラーの方が小学5年生の母親から勉強ができない、やる気がない等の問題の相談を受けている時のことを説明してくださった。
『勉強するようになるには』という相談だったそうで、何回か相談を受けまた、子供とも会っていて、その心理師は担任にも話を聞き境界知能の可能性を考え、公的機関で知能検査を受けてみることを提案したが、なかなか提案を受け入れてもらえず約6か月ぐらい経った頃にようやく提案を受け入れてくれて結果、IQ75であった。
このことについては、スクールカウンセラー2名と元校長は、なかなか受け入れてくれる親は少なく教師すらわかっていない場合もあったりするとのことでした。
私(千田)は、認知機能強化トレーニングに来られる小学生や中学生のお父さん、お母さんと同じように、多くのお父さん、お母さんも子供の能力や成績、行動についての観察と理解をされていると思っていたが、小学生の2年、3年、4年生ぐらいのお子さんのお父さん、お母さんはわかっておられない方もわりと多くおられるということである。
ちなみに、今回研究会で説明させていただいた事例の方は、ご両親が理解力があって本人が小学1年の時に知能検査を病院で受けたと言っておられました。
ただ、その後の対応方法がわからずに来てしまったともおっしゃられていた。
サポートも受けられない状況で、親にもなかなか理解されない状況で、大学に行きたいと思ったら行けるのか。
この件は、大学教授を含めみんなの意見として、入学できて卒業できる大学はある。ただし、大学を選ばなければということでした。
話の途中で、元校長、大学教授、私の3人が、昔の話として、我々が小学校や中学校の時は、集団の知能検査をしていたね。という話になった。(スクールカウンセラーの二人の時にはすでに行っていなかった)
今、行っている5歳児検診や入学前検診があったとしても、境界知能は現状問題がないとなっているので引っかからないだろうね。
(境界知能の方は7人に1人いると言われている:35人学級だと約5人はいることになります)
ただ、昔あった集団の知能検査のようなものがあれば、個々のレベルが理解できるので対応方法を考える参考になると思うんだけど、時代の変化とともにいろいろな意見を尊重されるようになっているので、昔はできていたが今はできなくなったということだそうです。
まぁ、それぞれにメリット・ディメリットがあるから仕方ないです。

千田のやっている認知機能強化トレーニングは
最後に、参加者全員が興味があったみたいで、それはそうと千田先生のやっている認知機能強化トレーニングは効果ありそうなのという話になっていった。
参加者の問い・認知機能強化トレーニングは、どういうのがあるの。
私が今やっているのは、ベースにしてトレーニングしているのは、『コグニティブトレーニング』と『前頭葉・実行機能プログラム(FEP)』で、必要に応じて、視機能・視覚認知に弱さがある場合には『ビジョン・トレーニング』、それと、基本は有酸素運動と認知作業の『デュアルタスク(二重課題)トレーニング』を行っている。
『デュアルタスク(二重課題)トレーニング』は、注意欠如多動症(ADHD)を対象に実行機能(特に前頭葉の働き)を強化できるのかという研究を結構されている。
『デュアルタスク(二重課題)トレーニング』の簡単な例としては、息が少し上がる程度のウォーキングかジョギング中に、100から7を順に引いていく計算を行い、その後も引く数を変えたり、ある数をの足し算を続けたりして20分~30分程度行う。
参加者の問い・効果は
実行機能(特に前頭葉の働き)の強化という面では効果はあると考えている。
私が行っている『コグニティブトレーニング』と『前頭葉・実行機能プログラム(FEP)』ベースにした認知機能強化トレーニングでは、トレーニングのスピードが速くなったり、内容を複雑化しても問題なくなったりと回数を重ねることに強化されている。(1クールは、『コグニティブトレーニング』24セッション、『前頭葉・実行機能プログラム(FEP)』48セッション)
また、きちんとトレーニングに取り組んでいる子供の場合は、お父さん、お母さんから日常生活での態度などの変化や勉強面(マンツーマンに近い個別塾や家庭教師)でも、トレーニングをやる前に比べて学習態度や説明の理解力に変化があるみたいである。
次に、家庭教師(大学生)による、コグニティブトレーニング(30分)と基礎学習指導(60分)を行っているが、教師たちからは個人差はあるがトレーニングをはじめて3か月~6カ月ぐらいから、学習態度に変化があったり、覚えておけることが増えたり、説明したことを理解するのに時間が少しづつではあるが短くなっているという結果を聞いている。
※実行機能には、ワーキングメモリー(作業記憶)や自己抑制、注意・集中力、整理整頓、計画性、セルフモニタリング(自己モニタリング、自己監視)などのが含まれております。
※ワーキングメモリー(作業記憶)とは、思考や判断などの際に必要な情報を一時保存しておく記憶機能
勉強以外の問題にも効果があると考える。
私は、一般的な子供から大人や軽度の知的発達症(知的能力障害)と境界知能の子供から大人の性加害者や子供の非行問題の相談も行っているが、みんながみんなではないが中学生ごろから子供の性非行・非行問題が多くなっていきます。
これを防止するうえでも、小学生の時から認知機能強化トレーニングを行っていると、先ほどから述べているように実行機能(特に前頭葉の働き)が強化され抑制が効くようになり、結果、子供が性非行・非行問題を起こさなくなくなります。
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