産後うつ病の相談者に認知行動療法を行った例

今回の掲載は本人に了解を得ている事例であることと、個人を特定できないようにいたしております。

今まさに産後うつで困られているご夫婦は、認知行動療法という方法もあることを知っていただければと思っております。


産後うつ病は10%~15%の方が出産後3か月以内になられるといわれております。
獨協医科大学の徳満 敬大氏らの研究(2020)では、
・日本人女性10万8,431例中、1か月時点での産後うつ病の有病率は14.3%
・妊娠中のうつ病の有病率は、妊娠第2三半期で14.0%、妊娠第3三半期で16.3%
・産後うつ病の期間ごとの有病率は以下の通り
●産後1か月以内:15.1%
●1か月~3か月:11.6%
●3か月~6か月:11.5%
●6か月~12カ月:11.5%
・初産婦は、経産婦(2回以上の出産を経験した女性)と比較し、産後うつ病の有病率は優位に上昇した。
※有病率・・ある一時点において病気(疾病)を有している人の割合

産後うつ病



30代前半、初産、
正常分娩であったが産後まもなくから授乳がうまくいかず、うまく育てられないのではと不安感が高まる。また、疲労がたまって睡眠不足が重なり倦怠感、食欲不振、気力も出なくなってきていた。
薬は飲みたくないと思っていたが、あまりの辛さから精神科を受診して3カ月間通院していたが、抑うつ症状が思ったほど改善しなかったことから、産後 5カ月の時点で担当医師と相談をしたところ認知行動療法の併用を提案される。その時に当ルームを紹介されて来所。



性格:真面目、神経質、内向的、ネガティブ考える傾向がある
既往歴(過去に大きな病気をした経験):重篤な病気や入院・手術はしたこともない。
たばこ:吸わない
お酒:ほとんど飲まない
趣味:読書と映画を見ること
家族:夫・30代 長男・5カ月


当ルームでの検査結果
エジンバラ産後うつ病自己評価票 (EPDS) :12点


QIDS -J(簡易抑うつ症状尺度):12(中等度)

CMI健康調査票:領域Ⅳ(神経症の可能性が強い)
※CMI健康調査票は身体的自覚症(12系統別)と精神的自覚症(6状態別)を把握と、そこから神経症(ストレスによって精神が疲弊した状態)かどうかの確認をする検査です。


初回時
現在の困りごとを伺いうつ病のテストとしてEPDS
QIDS -Jを行う。
次に、症状や状態の説明を認知モデル/認知行動モデルで説明を行った。
認知行動療法の進め方としては、お話をさせていただいてベーシックな認知再構成法という技法を中心に進めていけるであろうと考えた。また、途中状態によっては適時必要な技法を追加で行うことにした。
ホームワークとしては、CMI健康調査票の記入してきてもらうこととした。

認知モデル/認知行動モデルとは、認知行動療法で状態を説明するときに用いる方法。
人は、身体の外(対社会)や内(身体の症状や更年期などの生理的変化)の状況や環境に対して、様々な捉え方をしています。
その捉え方(認知)が行動や気分、身体化(体調)のネットワークを通じて一瞬に心身に影響を及ぼします。
状況⇒認知(物事の捉え方)⇒気分-行動-身体化



問題解決に向けて:
認知(物事の捉え方)の修正/行動の修正/身体問題の解決


2セッション以降(1週間に1回から隔週)
前回の相談後の確認。その日または1週間の気分を数字で表していただきます。
その後、その日お話しする話題を決定して、その日のお話を行ってまいります。
以後、2セッション~15セッション(8セッション以降は頻度は隔週とした)
認知再構成法は、3つのコラムという方法からはじめて5つのコラム、7つのコラムと順次進めていった。
途中、メリット・ディメリット、行動活性化という方法を用いた。



ホームワークは、
1、認知再構成法はノートなど書いてもらうが、産後うつの方の場合はスマホに打ち込んでもらうようにしている。
2、リラクゼーションの方法として『呼吸法』から始めて『漸進的筋弛緩法』
3、ユーチューブを参考に『ヨーガ』周産期バージョン



15セッションでは、当初の症状もなく子育てに対する不安感もなく夫婦で協力して問題なくできているということなので終了となる。

なお、3か月後に確認のために来てもらうが問題がないということで終了。


施術回数:15回
頻度:週1回~8回目以降は隔週1回
期間:6カ月 プラス 3か月後



『産後うつ病(不安を含む)の認知行動療法プログラム』のページもご参照ください。


参考文献
Tokumitsu, K., Sugawara, N., Maruo, K. et al. Prevalence of perinatal depression among Japanese women: a meta-analysis. Ann Gen Psychiatry 19, 41 (2020).

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