心理師・千田の思考:子供も大人もメンタルが弱いと言われてしまう方がいますが、なぜ、弱くなったかを考えてみる。
メンタルが弱い人と言われている人たちは、嫌だけど自分で作り上げてしまった人と外部の人からの度重なる言動によってそう思い込まされた人がいると考える。
ただ、自分で作り上げた人も子供の時から親、教師、クラスメイト、身内など外部の人の度重なる『ちょっとした言動(※1)』がきっかけで作られた人がほとんどではないかとも考えています。
なので、メンタルが弱いと言われている多くの人は、両方の影響を受けている人であろうと思います。
例えば、
「何でそんなこともできないんだ」とか、「ミスばっかりするんじゃない」「何度言ってもわからないやつだな」など、このような否定的なことが継続して言われると、メンタルが弱いという言われ方をする思考や行動のパターンができやすくなってしまいます。
※1、ちょっとした言動とは、本当に否定的を言われたり、また、ハッパをかけようとしての否定的言動、頑張れない状況での頑張れや勇気づけるための頑張れなど言動など、言われた人が否定されたととってしまう表現を含めた言動のことをいっています。
例えば、
一所懸命やってもできないでいる子供に頑張れということで「自分は頑張ってもできないだ」ととらえる子供がいることを周りは理解してその子にふさわしい言動をかける必要がある。
注意
特にADHDや境界知能(一般的にIQが70~85未満)の子供や大人の場合、度重なる否定的な言動を受けることが多くあります。

今回は、外部(親、教師、上司、クラスメイト、その他)の人が、子供や大人の人に否定的なことを継続して言うことで、メンタルが弱いと言われる人を実は作っていることについて書いてみたいと思います。
※1回や2回言われたぐらいで人は弱くはならない。
メンタルが弱いという言い方をするが、その人はもともと弱かったのか。
多分、もともと弱い人はいないのではないか。どちらかというと多くの人は似たり寄ったりのレベルではないかとは思います。
ただ、個々の物事の捉え方の違いや、以下に書かせていただいた環境によって問題が生じる確率は高くなるのであろうと考えます。
例えば、
家庭で子供の時からお前のためだと称して、否定的言動を多く使って厳しいしつけや教育を行う親や、少年野球やバスケットのチームやその他のスポーツで、主に親たちが指導していたりするとどうしても否定的言動(「そんなことじゃだめだ」「何でわからないの」「本当に下手だな」など)を行うことが多く、そのような家庭でのしつけやスポーツ指導を受けて育つと、どうしても自己否定的になったり他人の顔色を見る癖が身についてしまいます。
また、大人の場合も、上司がお前のためだと称して、否定的言動を多く使ってわりと厳しく指導したり、部下に必要以上にプレッシャーをかけたりすることがあります。
このようなことが継続して行われると、自分のことをネガティブに捉えたり、うつ病や適応反応症(適応障害)などメンタルに問題が生じるのはどちらかというと当たり前のことであろうと思います。
さて、今回のことについて認知行動モデルを用いて説明してみます。
認知行動モデルとは、『うつ病』や『パニック症などの不安症』、その他の精神疾患に対して、認知行動療法を行う上で症状を理解するための一つのモデルです。

図の認知行動モデルを例に説明
『状況・環境』としては、【母親に「何度言ってもきちんと出来ないんだから」「何やってんの、同じことをいわせないでよ」と言われた時】
『認知(物事のとらえ方・思考やイメージ)』(その時に瞬間的にフッと頭をよぎる考えやイメージ)
【だめだ、何をやってもうまくできないな】
【なんで、こんなにできないのかな】
【怒られてばかりだ】という考えが浮かんだ。
浮かんだ考えをもとに一瞬で『行動』『気分』『身体化(身体の状態)』に影響を及ぼすと考えます。
『行動』は、【伏せる】【ため息をつく】【部屋に引きこもってしまう】
『気分』は、【落ち込み】【不安】【緊張】が起こっている
『身体化(身体の状態・反応)』は、【動悸】【頭がだる重い】
今回はここが重要なところ
もう一つ図にある『スキーマ』とは、人(あなた)が蓄積してきた体験や知識の集合体のことをいいます。
もう少し簡単に言うと、時間経過とともに固定化する考え【思い込み】や【先入観】【ルール(こうしないといけない等)】【パターン化】などのことをいいます。
『スキーマ』は、環境や状況に対して一瞬に起きる『認知』や『行動』に強く影響を及ぼします。
『スキーマ』は脳の長期記憶であり、固定化した考えや脳内ネットワークの固定化(ネガティブなサイクル)です。(一度形成されると修正するのには時間が必要となる)
それが一瞬で今の『認知』にも影響を及ぼすことになる。
『スキーマ』は約6か月程度(早ければ3か月程度)で形成されると考えられている。
人は、何年にもわたって本人の考え方、行動に対して否定的言動を繰り返される環境の中で育つと、どうしても自分自身をネガティブに捉えたりマイナスに捉えたりするスキーマが作られる可能性が高くなります。
同じように会社で6カ月以上にわたって上司や同僚から本人の考え方、行動を否定的に言われることでも自分自身をネガティブに捉えたりマイナスに捉えたりするスキーマができる可能性が高くなります。
今回の問題以外にもスキーマが問題になることがよくあります。
例えば、『ついつい人の顔色を見て不安になる人・社交不安症など』、『パーソナリティー症』、『再発を繰り返すうつ病や不安症』、『長期間にわたるうつ病や慢性疾患』など、様々な問題がスキーマの影響を受けます。

じゃどうすればいいのか。
子供の場合、親や大人が過保護や過干渉でない限り、『客観的(感情的でない)な言動でのしつけや指導とその結果の良い所を見つけて毎回ほめて育てる』そうすることで、大人になってもメンタルが弱いということも起きないと考えます。
子供にカウンセリングが必要な場合もあることを、親を含め大人たちは注意深く子供の言動を観察して理解してあげてください。
また、親が『ペアレントトレーニング(※2)』を受けることも効果的な方法の一つです。
また、大人への対応としては、会社での上司の指導も同じよう『仕事の内容を客観的態度で指導して、その結果を必ず褒めることができれば』そこまでメンタルが問題になるようなことはないであろうと思います。
そのことを理解するためにも企業や自治体が、メンタルヘルス研修などで社員や職員に対して『上司になった時の部下に対しての指導方法の研修』などを取り入れていただければと思います。
今、すでに辛い本人はどうすればいいのか。
我慢をし続けることは得策ではないので、すぐにでも問題解決型のカウンセリングに行かれることを勧めます。
問題解決型のカウンセリングとは、認知行動療法やブリーフセラピー(短期療法)など。
※2、ペアレントトレーニング
1960年代にアメリカで開発された、保護者が子どもの行動に正しく対応するためのスキルや知識を習得するためのプログラム
特にADHDの子供をお持ちの保護者を対象に行われることが多いのですが、現在では神経発達症に関係なく一般の保護者の方々の受講されております。

要は、親や大人、上司というように上の者が、ペアレントトレーニングなどの人を伸ばすしつけの方法や指導方法を心理師やコーチに付いてきちんと学び、そして、家庭や現場、職場では自身をコントロールして指導しているかということが問題であるということだけです。
厳しく否定的言動を浴びながら育てたら強くなるのではなく(確実に自己否定する人の確率が増える)、肯定されながら育てられると強くなり自己肯定感ができるということです。
親や指導者、上司の方は、大人の代表としてグッとこらえて頑張りませんか。
山本五十六さんも言ってます。
『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。』
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