産後うつ病で困られている方に認知行動療法と鍼治療を併用した例

掲載にあたって本人に了解を得ている事例であることと、個人を特定できないようにいたしております。

産後うつ病



今回の産後うつ病で困られていた方は、心理的な辛さに加えて自律神経症状など身体の辛さも多く訴えられたために、認知行動療法に鍼治療を併用する方法で行いました。


30代、初産
正常分娩であったが産後から続く全身の倦怠感、うまく育てられないのではないかという不安感や些細なことへのこだわり、悲観的な考え方また、睡眠不足が重なり首から背中にかけての重だるさ、食欲不振、気力も出なくなってきていた。
出産後より2か月たった時に、辛さから精神科を受診。
当ルームの初回時には、精神科に2カ月通院しており、抑うつ症状は多少改善していたが、不安感や些細なことへのこだわり、悲観的な考え方、それと身体症状である倦怠感や自律神経症状が解消しないでいた。
当ルームにはホームページをご覧になられて来られております。
なお、担当医師には認知行動療法を行うことの許可を得ております。



性格:真面目、社交的、こだわりが強い、細かい
既往歴(過去に大きな病気をした経験):仕事の関係で20代後半にうつ病、薬物療法のみでよくなっている。
たばこ:吸わない
お酒:ほとんど飲まない
趣味:フルート
家族:夫・40代 長男・4カ月



当ルームでの検査結果
エジンバラ産後うつ病自己評価票 (EPDS) :12点

QIDS -J(簡易抑うつ症状尺度):12(中等度)


CMI健康調査票:領域Ⅳ(神経症の可能性が強い)
なお、身体的自覚症の項目では、消化器系/筋肉骨格系泌尿生殖器系/疲労度/習慣が高得点であるのと、精神的自覚症の項目では、抑うつ/不安/過敏/緊張が高得点であった。
CMI健康調査票は身体的自覚症(12系統別)と精神的自覚症(6状態別)を把握と、そこから神経症(ストレスによって精神が疲弊した状態)かどうかの確認をするための検査です。


鍼治療の目的と刺鍼の場所
1、脳血流改善を目的に、四肢末端への鍼治療プラス低周波鍼通電(20分~30分程度)(どこのツボではなく肘から先と膝から先に鍼治療を行うことで、脳血流が改善することがわかっている)

2、脳血流改善を目的に、頭のてっぺん付近(ツボ名は百会)と眉間(ツボ名は印堂)または、左前頭葉の2か所に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分~30分程度)

3、脳血流改善を目的に、耳と眼窩上神経(ツボ名は陽白)、眼窩下神経(ツボ名は四白)、オトガイ神経(ツボ名は大迎)や耳に置鍼(20分~30分程度)

4、身体の重だるさや痛みを訴える部位と自律神経症状に改善のため抗重力筋に置鍼(20分程度)
置鍼とは、鍼を刺入した状態で置いておくこと。


初回時
家族で来室。(2回目以降も家族3人で来室・ベビーカーごと入ってもらう)
現在の困りごとを伺いうつ病のテストとしてEPDS/QIDS -Jを行う。
この方は当ルームを選んだ理由が、憂うつ感や不安感などの心理状態と身体症状の辛さから、認知行動療法と鍼灸治療を同時に受けることができるところを探されていた。
なので、はじめから認知行動療法と鍼灸治療を行っていくこととした。
次に、症状や状態の説明を認知モデル/認知行動モデルで説明を行った。
認知行動療法の進め方としては、お話をさせていただいてベーシックな認知再構成法という技法を中心に進めていけるであろうと考えた。また、途中状態によっては適時必要な技法を追加で行うことにした。

その後、鍼治療では『鍼治療の目的と刺鍼の場所』に書いてある場所に施術を行った。

ホームワークとしては、CMI健康調査票の記入してきてもらうこととした。


認知モデル/認知行動モデルとは、認知行動療法で状態を説明するときに用いる方法。
人は、身体の外(対社会)や内(身体の症状などの生理的変化)の状況や環境に対して、様々な捉え方をしています。
その捉え方(認知)が行動や気分、身体化(体調)のネットワークを通じて一瞬に心身に影響を及ぼします。
状況・環境 ⇒ 認知(物事の捉え方) ⇒ 気分-行動-身体化
問題解決に向けて:認知(物事の捉え方)の修正/行動の修正/身体問題(身体化)の解決


図は産後うつ病の方の状態の一部を表したものです。



2セッション以降(1週間に1回から隔週)
はじめに認知行動療法を行い、次に鍼治療を行った。
時間はその時々で多少の違いはあるが約40分づつで行った。

認知行動療法は、
前回の相談後の確認。その日または1週間の気分を数字で表していただきます。
その後、その日お話しする話題を決定して、その日のお話を行ってまいります。
その後、鍼治療では『鍼治療の目的と刺鍼の場所』に書いてある場所に施術を行った。
以後、2セッション~14セッション(8セッション以降は頻度は隔週とした)
認知再構成法は、3つのコラムという方法からはじめて5つのコラム、7つのコラムと順次進めていった。
途中、メリット・ディメリット、行動活性化という方法を用いた。

鍼治療は、施術場所と時間はほとんど変えずに行った。


ホームワークは、
1、認知再構成法はノートなど書いてもらうが、産後うつ病の方の場合はスマホに打ち込んでもらうようにしている。
2、リラクゼーションの方法として『呼吸法』から始めて『漸進的筋弛緩法』
3、夫に、妻の凝っている抗重力筋にマッサージを可能な限り毎日してもらう。
夫にはご苦労様として、相談室で子供が寝ている時は、肩こりがあるというので無料で簡単な鍼治療を行った。


14セッションでは、当初の症状もなく子育てに対する不安感もなく夫婦で協力して問題なくできているということなので終了となる。

なお、3か月後に確認のために来てもらうが問題がないということで終了。


相談時間:70分間
(通常、1回の相談時間は50分間又は90分間であるが、認知行動療法と鍼灸治療を併用する場合は、相談によって時間を決めている)
施術回数:14回
頻度:週1回~8回目以降は隔週1回
期間:約6カ月 プラス 3か月後



『産後うつ病(不安を含む)の認知行動療法プログラム』のページもご参照ください。

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