心理師・千田の思考:子供と境界知能や軽度知的発達症の子供から大人の性犯罪再犯予防プログラムを行っていて思うこと
今回は、一般(平均的な知能指数)の子供から境界知能(知能指数(IQ):70~85未満)の子供、軽度知的発達症(知能指数(IQ):概ね50~69)の子供から大人の性の問題行動や性犯罪、性暴力加害者を対象に再犯防止の認知行動療法プログラムを行っている心理師として、個別プログラムとグループプログラムなどについて思うままに書いてみたいと思います。

境界知能や軽度発達症の個人差
まずは、境界知能の子供と軽度知的発達症の方に、個別での再犯予防の認知行動療法プログラムを行っている時に、途中で「説明はわかりましたか」と聞くと「わかりました」と気持ちよく答えてくれるのですが、よくよく聞いていると全くわかっていなかったということが多々あります。
これは個別プログラムの場合だと、確認作業や説明スピードなどをその都度調整しながらできますが、グループで行う場合だと当たり前のことなんですが、知識レベルや理解力がひとりひとり違っていると、その都度ひとりひとり確認作業を行うとプログラムが進まないので、このディメリットをカバーするために多くの施設ではグループセッションを行う場合、メインとサブのように2人~3人一組で行っている。
ちなみに、グループで行っているところは、ひとグループの人数は5名~8名程度、1回の時間は2時間~3時間で、ワンクールは10回~20回程度だと思います。人によって2クールから3クール必要な方もおられます。
個別の場合は、1回の時間は50分~90分で、ワンクールは10回~20回程度です。人によって追加で10回~20回程度必要な方もおられます。
次に、IQの違いによる理解力の差
例えば、同じ境界知能でもIQ70台前半とIQ80台前半では理解力に差があります。
これは今回のお話とは関係ないのですが、境界知能の方を対象に『脳の認知機能強化トレーニング※1』を行っていますが、IQ70台前半とIQ80台前ではできる課題の難易度が大きく変わってきたりします。
また、軽度知的発達症の方についても同様で、IQ50台後半とIQ60台後半でも大きく違ってきます。
なお、境界知能は障害ではないので、一般の子供達と同じグループに入っている場合があります。その場合、説明内容の理解もさることながら、説明スピードにもついて行くことが難しいために、より理解できない状況が続いている可能性があると考えます。
例えば、IQ100が平均値なので、そのグループにIQ70台前半~後半の子供が仮に2人いるとしたら、サブはその2人につきっきりの状態となってしまうであろうと思います。そうすると、メインの心理師が残りの人数を一人で指導を行わないといけない状況になってしまいます。
性問題行動や性犯罪加害者のグループでのプログラムを行っているところでは、今回はIQだけについて話していますが、それ以外にも神経発達症など様々な要因によって違いがあったりするので、どのような基準を用いてグループ分けをするかがとても重要になっているのであろうと思っています。
当ルームでは、今のところそれに対応できないために個別でのプログラムを行っております。
例えば、『中学生の軽度知的発達症でIQ60台前半で盗撮を行ったグループ』とか『高校生でIQ70台前半で痴漢を行ったグループ』のように丁寧なグループ分けができるのであれば、グループのメリットも十分に発揮できるのではないかとは思っています。
※1、脳の認知機能強化トレーニング:コグトレや前頭葉・実行機能プログラム(FEP)など。
認知機能とは、記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断といったいくつかの要素が含まれている知的機能のことをいいます。
境界知能について:軽度知的発達症の場合は、発達過程で知能検査などを受けていて理解されているが、境界知能の子供は、普通に生活をしていれば知能検査を受ける機会はないので、自分のIQを知っている方は少ないと思います。
ただ、親から見て子供が毎日勉強をしているのに、小学校や中学、高校の成績評価が1や2がほとんどの場合は境界知能の可能性も考えてみてください。(小学校入学後から通常の授業スピードには、ついていけていないと思います)
★境界知能の説明と脳機能強化トレーニング-境界知能の相談とトレーニング-
★コグトレ(脳の認知機能強化トレーニング)の説明と受付・ページ
★子供から大人の性犯罪や性暴力加害者の再犯防止のための認知行動療法プログラム・ページ

全てではないが、相談をしているとこのように子供達もいます。
境界知能や軽度知的発達症の子供で、先ほども書かせていただいた「説明はわかりましたか」と聞くと「わかりました」と答えると書きましたが、幼少期から「わからない」というと「何でこんなこともわからないの」など叱られたりることが多かったり今も続いていることが考えられる。
また、幼少期から叱られることが多いので、わからなくてもとりあえず「わかった」と答えておこうということを学習している子供もおられます。
このような子供達は、プログラムを進めていてわからなくても「わかった」と言ってしまうので注意がいる。
(丁寧に確認してあげる必要があります)
再犯防止プログラムや脳の認知機能強化トレーニングに来られる境界知能の方で、小学4、5年生以上、大人も含めてこのようなことをよくお話しいただきます。
『できないもどかしさと、できない自分を理解できてしまう辛さ、そして、そのことが理解できてもやっぱりできない自分がいる辛さ』
この辛さを少しでも解決できないものかと、当ルームでは『脳の認知機能強化トレーニング』を行っている次第です。
出来ないことがわかる辛さは計り知れないことであろうと思っております。
自分自身がストレスとなっているということです。
そこに「何でできないの」と週や月に何度も言われてしまうと、逃げ場のない状態が続いてしまっていることになります。
また、このような状態が続くことで、うつ病や適応反応症(適応障害)などの精神疾患になったりする場合があるので、注意が必要です。
お父さん、お母さんには、出来るだけ、できることできているところに目を向けてあげてほしいものです。
少し話は違うのですが、痴漢や盗撮、下着の窃盗、不同意わいせつ、不同意性交等、その他の性犯罪で警察に捕まったり補導された後のことですが、子供の場合は、児童相談所で面接・相談に行くことになることが多いのですが、各都道府県によって、警察も、児童相談所もですが呼び出されるまでの期間がバラバラみたいなのです。
例えば、東京都と神奈川県でも違うのですが、オンラインカウンセリングを地方の子供や大人の方と行っていますが、地方は割と速いペースで進む傾向があるみたいです。
当たり前のことですが、警察も、児童相談所も性犯罪だけを扱っているわけではないので、犯罪件数や犯罪者の数による違いなのかなとは思っています。
今回はまとまりのない話になってしまいましたが、性の問題行動や性犯罪、性暴力加害者などで警察に逮捕、補導された場合、お子さんに合う再犯防止に向けた認知行動療法プログラムは、個別プログラムなのかグループプログラムなのかはじっくりと考えてあげていただきたいと思います。

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