大人の神経発達症(発達障害・ASDとADHD):個人・夫婦関係(性生活も含む)問題の相談例
神経発達症で相談に来られている方の代表的な4つの相談例
1、人間関係がうまくいかないために発達障害ではないかと思って精神科を受診後に相談に来られたASD(自閉スペクトラム症)の方
2、うつ病と飲酒の問題(二次障害)で相談に来られたASDの方
3、と4、は現在作成中です。
3、夫婦関係問題から妻にASDではないかと言われオンラインで相談を行ったご夫婦
4、うつ病(二次障害)で相談に来られた方で、夫婦関係と性生活にも問題があったASDとADHD(注意欠如・多動症)の併存の方
※掲載にあたって本人に了解を得ている事例であることと、個人を特定できないように配慮いたしております。
1、人間関係がうまくいかないために発達障害ではないかと思って精神科を受診後に相談に来られたASDの方
30代、女性・会社員
子供の時から人間関係でつまずいていたので、もしかしたら発達障害ではないかと思って精神科クリニックを受診。
診察で家庭環境や幼少期のことを話すが、この時にはASDではないと言われる。
しかし、ある検査(検査名は不明)を行ったところ共感性がゼロだったので、ASDの可能性があるのでより詳しい検査を提案される。
ただ、ASDでないと言われたりASDであると言われたりと少し不信感が出てしまってその後は行かないでいた。
それから6か月後、当ルームに来室。
問題は、仕事でのコミュニケーション。
上司からは、①チームワークをうまくとりなさい、②できない人の教育、③人の気持ちに立って考えなさい。と言われていることで悩みを抱えていた。
現在の会社は2社目で、1社目は日系の会社で約4年務めるが、人間関係で苦しくなってしまってやめる。現在の会社は外資系で11年目である。ヨーロッパ本社(国名は表示しません)の所属となっており日本人は数名である。なお、彼女の所属するチームには日本人は彼女のみであった。チーム内は多国籍の状態であったので、文化などの違いから話さないとわからないという風土があり、自分の担当する仕事だけを行う上ではコミュニケーションに問題はなかった。
生育歴
母親は自分の思い通りにならないと怒鳴り散らしていた。ストレスがあると父にあたっていたし、父がいない状況では本人や姉に怒鳴ってきていた。父とは相談はできていた。
子供の時から対人関係は苦手だった。ただ、嫌われたくはないので一人ぼっちにならないために友人を作ろうとしていた。小学校の時はクラス替えの時が一番大変で、新しく関係を作ることが常に憂うつであった。
中学、高校は私立で進学校だったために勉強を行うことでそれほど、人とかかわらずに済んでいた。
大学は有名大学に修士まで通う。
大学時代以降は、人との物事の捉え方の違いとその対応に苦労してきた。職場では折り合いがつけられずに、自分の考えと違った方向に進んでしまった時などは合わすのがとても難しく思っていた。また、人に変にみられないようにしようとして、人の目ばかり気にして本当の自分を出せていない。そうかと思うと合わしたくないなとも思ったりもして、上司とは何度ももめている。
性格:こだわりが強い、自分中心に物事を考える、白黒をはっきりとつけたい
既往歴(過去に大きな病気をした経験):特になし
聴覚:音に敏感である
たばこ:吸わない
お酒:ほとんど飲まない
趣味:読書
家族:父・70代 母親・70代 姉・40代(結婚をしている)
当ルームでの簡易検査結果
AQ(自閉症スペクトラム指数):44点(※カットオフ・33点)
AQ:自閉スペクトラム症のスクリーニングテストとして使用
※カットオフ:この点数以上であればその可能性があります。という数字。
初回時
上記に書いているような現在の困りごとや今までの経過、生育歴などのお話をしていただく。次に認知行動モデルの説明を行う。途中でスクリーニングテストとしてAQを行う。
2セッション以降(1週間に1回から隔週)
2セッションからは『ASDに特化した認知行動療法』を行っていくこととした。
2セッションでは、AQの結果踏まえて本人の特性を明らかにしていく。また、この時にASDの特性とASDでない人の特性の違いも把握してもらう。ここがとても大切である。そして、それぞれの特性の強みと弱みも理解していく。
2セッション時には、自分の専門性を高めることと会社が求めている人の管理を現状はチョイスできるというお話をされたので、人の管理をする立場には当面ならないようにする。
ASDに特化した認知行動療法は、
前回の相談後の確認。その日または1週間の気分を数字で表していただきます。
その後、基本的にはその日のプログラムを行います。ただ、その日にどうしても話したいことがあればそれを優先するようにしました。
以後、2セッション~8セッション(6セッション以降は頻度は隔週とした)
コラム方という方法を用いて行いました。
途中、メリット・ディメリット、行動活性化という方法なども用いた。
相談時間:50分間
相談回数:12回
頻 度:週1回~6回目は週1回、それ以降は隔週1回、最後の2回は月に1回
期 間:約7カ月
あとがき
ただし、現在も6か月から1年の間で不定期ではあるが、気になることや疑問に思うことがあると相談に来ている。
相談終了後に、このように不定期に相談に来られる方が結構おられます。このように来てもらえることで問題や悩み事がこじれないで済むので私(千田)としては勧めたい。
この方のようにASDの方はやはり人間関係でストレスを強く持たれる方が多い。
例えば、子供の時から「何となく人とうまくいかないな」とは思っていてもそれなりにこなしている場合。この時は問題とまでは言えない状態でこれを自閉スペクトラム(AS)と呼んだりします。
そして、就職をして対人関係が複雑になってくることで、問題が生じて生きずらくなった状態を自閉スペクトラム症(ASD)と呼びます。このようなしんどい状態が解決されないで続くと、二次障害としてうつ病や適応障害、パニック障害などになったりしてしまいます。
また、専門職や研究職で働いていた方が、年齢にかかわらず転職後にASDであることに気づいたり、人の管理を任されるようになると問題が生じたりすることも多いです。
※AS/ASD:ASとは自閉スペクトラムというタイプのことをいいます。困ったり、問題が生じていない場合に使用します。ASDは自閉スペクトラム症ことをいい、ASの後のD(disorder)は障害と訳され、悩んだり問題を抱えている場合に使用します。
中学生~大人の自閉スペクトラム症(ASD)の認知行動療法
-認知行動療法によるセルフケア(マネジメント)の方法を学ぶ-
中学生~大人の注意欠如・多動症(ADHD)の認知行動療法とコーチング
-日常生活における実行機能のセルフケア(マネジメント)の方法を学ぶ-
うつ病と飲酒の問題(二次障害)で相談に来られたASDの方
30代後半、男性・会社員
入社から1年前までは、仕事は各々が自分の判断で行っていい仕事ではあったために、個人の能力が高い本人は順調に現在までは進んできていた。
しかし、1年前より大きなプロジェクトを任されるようになったころより問題が起きはじめる。始まった時からプロジェクト内でのコミュニケーションがうまくいかず、仕事の進捗状況も計画からどんどん遅れ始めていた。そのことについて上司から注意を頻繁に受けるようになる。
このような状況が続いていたために、憂さを晴らすために多量のお酒を飲む日が多くなり、憂うつな日々を過ごしていた。また、会社人としてはあってはいけないことではあるが、会社での飲み会などに参加した時に、酔っぱらって上司に対して切れてしまうこともあった。プロジェクト開始から約10カ月を過ぎたころには、お酒も相変わらず多量に飲む日が多くあったが、だんだん眠りが浅くなり次の日もあまり寝た感じがしなく辛くなってきたために精神科を受診、うつ病と診断される。3カ月の休職となる。
薬を飲み始めて約2か月がたったころに担当医師より認知行動療法を勧められ当ルームを紹介される。
生育歴
地方都市に暮らしていた。両親は教師であったがそれほど勉強にはうるさくはなかった。小学生4年生の時、お腹がいつも痛く下痢気味だったので病院に行ったら過敏性腸症候群(IBS)という診断を受ける。高校までは症状が強く続き、その後も就職後5年程度まで続いていた。
同じ小学生のころ友人がルールを守らなかったり、ちゃんとしないことに腹を立てていた。また、音にはとにかく敏感に反応していたし大きな音は苦手で耳をふさぐこともあった。
小学生から中学生にかけて、漠然とではあるが周りの友人たちと話していてもなんとなく合わない気がしていた。
高校はその地域では一番レベルが高い学校(進学校)にはいる。この時期は部活にも入らず勉強をしていたので、周りとのいざこざもなく何も問題ない状態で過ごしていた。
大学は都内の上位校に入学、修士まで進み卒業後、現在の会社に就職。1年前までは問題なく過ごしていた。
ただし、小学校からずっと続いていることがあって、人と話をしていてもかみ合わなかったり、自分のことが理解されていない気が大人になってからもいつもしていた。
性格:こだわりが強い、自分中心に物事を考える、白黒をはっきりとつけたい、変化に弱い
既往歴(過去に大きな病気をした経験):過敏性腸症候群
聴覚:音に敏感である
たばこ:吸わない
お酒:毎日ビール500ml×2本、焼酎350ml(この量は相談に来た当初・本人は結構減ったと言っていた)
趣味:車と旅行
家族:本人30代後半 妻(強迫症)・30代 長男(ASD)・次男(ASD)
当ルームでの簡易検査結果
うつ病の簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS -J):13(中等度)
AQ(自閉症スペクトラム指数):37点(※カットオフ・33点)
AQ:自閉スペクトラム症のスクリーニングテストとして使用
※カットオフ:この点数以上であればその可能性があります。という数字。
初回時
上記に書いているような現在の困りごとや今までの経過、生育歴などのお話をしていただく。次にうつ病と飲酒行動について認知行動モデルを用いて説明を行う。また、相談での受け答えや小学校から続く対人関係の違和感など気になることを話されたので、自閉スペクトラムの特性や説明など簡単に行いAQもQIDS -Jと同時に受けてもらうこととした。
2セッション以降(1週間に1回から隔週)
2セッションではAQの結果踏まえて本人の特性を明らかにしていくこととした。また、この時にASDの特性とASDでない人の特性の違いも把握してもらう。ここがとても大切である。そして、それぞれの特性の強みと弱みも理解していく。
さて、特性を理解してもらったことで、当面はうつ病と飲酒行動に対する認知行動療法を行った。途中、ASDの特性とASDでない人の特性の違いの確認をしながら10セッション行う。(7セッション以降は頻度は隔週とした)
途中、メリット・ディメリット、行動活性化という方法なども用いた。
うつ病の認知行動モデル(例)
うつ病の症状及び飲酒行動が改善されてきたために『ASDに特化した認知行動療法』に移行していく。ただし、うつ病や飲酒行動はASDの特性などとも関係しているためにスパッと切り分けて進めていくわけではなく、関係性を持たしながら進めてまいります。
ASDに特化した認知行動療法は、
前回の相談後の確認。その日または1週間の気分を数字で表していただきます。
その後、基本的にはその日のプログラムを行います。ただ、その日にどうしても話したいことがあればそれを優先するようにしました。
以後、12セッション~20セッション
コラム方という方法を用いて行いました。
相談時間:50分間
相談回数:20回
頻 度:週1回~6回目は週1回、それ以降は隔週1回、最後の3回は1か月後を2回とその3か月後
期 間:約1年
あとがき
ただし、1番目の方と同様で現在も6か月から1年の間で不定期ではあるが、気になることや疑問に思うことがあると相談に来ている。
相談終了後に、このように不定期に相談に来られる方が結構おられます。このように来てもらえることで問題や悩み事がこじれないで済むので私(千田)としては勧めたい。
今回の方はうつ病と飲酒行動が問題でありましたが、ASDでもADHDでもまた併存している場合でも、パニック症や強迫症、適応障害、不眠症、依存症など二次障害で困られている方がたくさんおられます。
その場合、ASDやADHDの特性を踏まえてその症状に合った治療や認知行動療法が必要になります。
ASDやADHDの特性をお持ちの方なのに、その特性を踏まえないで例えばうつ病の治療や認知行動療法を行っても問題解決にはつながらない場合が多くあります。
現在すでにうつ病やパニック症や強迫症、適応障害、不眠症で困られている方で、子供の時からこだわりが強かったり、空気が読めなかったりとASDの傾向やADHDの特性があるかないかで対応が違ってくるので、ご自身でも当ルームのASDやADHDのページで特性を調べてください。
※AS/ASD:ASとは自閉スペクトラムというタイプのことをいいます。困ったり、問題が生じていない場合に使用します。ASDは自閉スペクトラム症ことをいい、ASの後のD(disorder)は障害と訳され、悩んだり問題を抱えている場合に使用します。
中学生~大人の自閉スペクトラム症(ASD)の認知行動療法
-認知行動療法によるセルフケア(マネジメント)の方法を学ぶ-
中学生~大人の注意欠如・多動症(ADHD)の認知行動療法とコーチング
-日常生活における実行機能のセルフケア(マネジメント)の方法を学ぶ-