自閉スペクトラム症と二次障害のうつ病の例

現在、悩まれたり問題を抱えたりする人が、相談や診察を受けに行く動機づけになればと考え「このような悩みを抱えられている人が相談に来られました」という大雑把ではありますが随時紹介していきます。
なお、今後紹介する例は実際に来られた方で提示することの許可をいただけた方をモデルにしおります。ただし、特定の人物がわからないように多少変更を施しております。

30代男性

仕事をバリバリこなしていたが、結婚後より憂鬱な気分がつよくなり、精神科でうつ病と診断された後、認知行動療法を担当医師に勧められ当ルームを紹介された方です。

お付き合いを約1年した後に1年6か月前に結婚。
結婚後は夫婦関係の問題からたびたび喧嘩をするようになり、奥様には「どうして私の気持ちをわかってくれないの」とか「何でそんな冗談を本気にするの」などなど、様々なことで追い込まれていると訴えてきました。

話を聞いていて夫婦関係の問題からうつ病になったのであろうと考えてはいたが、相談をしていて何となく違和感を感じたので、もう少しさかのぼって生い立ちやその時期の人間関係などを詳しく確認することにした。
本人が覚えている範囲では、小学性の時に思っていたことは「何で自分のところによって来るんだ」とか「みんなと話していても全くつまらないな」とか、お母さんには「人の気持ちがわからない子だね」と言われた記憶がある。と話された。

中学校までは公立で中学1年の時が人間関係が一番最悪であった。本当に人間関係で疲れ切っていた。
ただ、2年生以降は成績がいつも学年で1番から3番の間にいたために「勉キチ」というあだ名をつけられたために、一人で勉強していると人が寄ってこなくなったためにとっても楽になった。
高校は全国区の有名校、学校ではある研究というか実験に興味を持ち、ほぼ3年間勉強と研究?をして過ごす。クラス内では最低限の会話でよかったので全く問題はなかった。
大学は高校から興味を持った研究ができるところに進学(難関大学)そして、そのまま大学院に進みほぼ研究をして過ごしていた。
博士課程に進むかどうか悩んでいた時に、自分のやっていた研究ができる会社があることを知り就職することにした。

就職先は研究所でほぼ研究をして過ごす毎日で、話すことと言えば研究にまつわることだけなので日々とても充実して過ごしていた。

さて、どうも成長の過程でちょっと躓き程度の人間関係の問題もあったが、空気を読まないといけないとか、表情を読んで相手の気持ちを汲み取るとか、このような関係性がなくても問題がない状況で暮らせていた。
が、結婚後は情緒的コミュニケーションを求められたり、妻の気持ちを汲み取るとか、本人の特性にとって難しい問題にぶち当たりまた、妻としても自身の気持ちが理解されない辛さから発してしまう言動、このような夫婦のコミュニケーションが合わなくなってしまっている状態が1年6か月にわたって続いている結果、うつ病になってしまった。

さて、初回の相談の終了間際に本人から「本とかで少し調べてみたのですが、自分は発達障害なのですか」と聞いてこられたので、次回スクリーニングテストとして、自閉スペクトラム症(以後、ASDと記載)はAQ日本語版で、注意欠如・多動症(以後、ADHDと記載)はCAARS日本語版を用いて調べることとした。
それ以外にもうつ病のテスト等いくつかのテストを行うこととした。

テスト結果は、ASDについては、カットオフ値を超えている。
カットオフ値は統計的に決められた数値で、それを超えるとASDである確率が高いのでより詳しい検査または、DSM-5に基づいた診断が必要になる。
ただ、診断は医師のみが行えるものである。
ADHDについては問題はなかった。

先にテストについて書かせていただきましたが、2回目の相談には奥様と一緒にいらっしゃいました。
私としては、今回のテスト結果を見てから奥様と次回いらしてください。というつもりだったのですが、初回相談後に「カウンセリングどうだった」と聞かれたので説明をしたら、次は一緒に行くということになったということでした。
さて、テスト結果からもASDの可能性が高いことはわかった。
そのASDの特性が絡んでいるために、夫婦の会話がかみ合わずに、本人(夫)も妻もつらい状況であったことを心理教育といって、どのような状態や状況なのかをホワイトボードに書きながら説明をさせていただきました。
それと、今回のご夫婦でよかったことは、奥様も夫に自分の感情を理解してもらえない辛さを抱えていたが、夫のことを理解したいということが働いていたことが、問題解決に向けて一番だったと考えております。

相談では問題解決をどのようにするのかという説明もさせていただきました。
ACAT(エーキャット)というASDに特化した認知行動療法を夫婦で行い、夫の特性を理解した対応方法(マネジメント方法)を夫・妻・心理師がアイデアを出しながら考えていくことを伝え以下のモデルをホワイトボードに書いて説明をさせていただきました。

ACAT・認知行動モデル

相談では、

1、夫のASDの特性の詳細を明らかにする。(ここがもっとの重要)
2、次にそれを上の図の認知行動モデルに当てはめ、夫・妻ともに理解をしてもらう。
3、その後、問題解決(セルフマネジメント)として、夫ができること妻が夫の特性に対して対応できる方法・ショックを受けなくてすむ方法など、詳細な対応方法を3者で考える。

このご夫婦は、上記の内容に沿ってACAT(認知行動療法)を15回行いました。

当初のうつ病については、問題ない状態(薬はすぐには切れないので認知行動療法が終了後も何か月かは飲まれていました)になっており、ASDに対しても夫婦で夫のASDの特性に対してマネジメントができる自信を持っていただけました。

千田としては、当初、夫がASDであることを知ると、奥様の年齢も若かったのと子供もまだいなかったので離婚の話が出てきてしまうのではないかと考えていました。
(状態の重さにもよりますが、離婚される夫婦の少なくはないです)
ただ、今回は私の取り越し苦労で、実際は夫婦が協力されて問題解決につながりました。


以上がASDの夫が夫婦関係から二次障害としてうつ病を発症した問題に対して、夫婦でACATというASDに特化した認知行動療法を使用してうまくいった例の一つです。


二次障害には、うつ病以外にもパニック障害や社交不安障害、全般性不安障害、強迫性障害、また、子供であれば不登校、成人の引きこもりなどがあります。
また、疾患名ではないですが、夫婦の場合にはカサンドラ症候群もよくある状態です。

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